ブッダガヤに駐在して

東日本大震災被災者追悼法要での弔鐘供養

2013年の夏、日頃御世話になっている先輩僧から「インドの日本寺で駐在僧を募集しているらしいんだけど行ってみないか。」とお誘いを頂きまして、私はすぐに「はい、行きます。」と返答しました。
私も多分に漏れず、インドに対する様々なイメージを持ってはいました。
しかし、たった一度の人生において、外国で長期間生活をするという事は非常に有り難く、貴重な人生経験になると思いましたし、何よりも僧侶として、仏教徒として、仏教最高の聖地であるインド・ブッダガヤに行けるということが大変魅力的でしたので、早速駐在僧に応募させて頂きました。

そして2013年10月3日、関西国際空港からバンコク空港を経由して、インド・ガヤ空港に降り立ちました。

日本寺のあるブッダガヤの乾季は、１～２月に少し寒くなるぐらいで、ほとんど半袖でも過ごせる穏やかな気候です。しかしその分雨季は連日４０度を超える暑さと物凄い湿度で、過酷な環境になります。私は１０月から３月までの凡そ半年間駐在しましたので、非常に過ごしやすい気候の中生活させて頂きました。

浄土宗駐在僧・臨済宗坐禅セッション開催のデンマーク人講師と共に

印度山日本寺は大菩提寺から徒歩１０分程の場所にある日本仏教各宗派の協力によって建てられた超宗派の寺院です。
超宗派の寺院ということで、私が駐在していた半年間は浄土宗僧侶と一緒の生活でしたし、日本からも様々な宗派の団体参拝がありました。
日本では他宗の僧侶と接する機会がほとんどありませんので、他宗の僧侶との交流は新鮮であり、勉強になりました。
また、日本寺のスタッフは非常に素晴らしい人たちばかりでした。GM（ジェネラルマネージャー）のロプサンや、我々駐在僧の食事を作ってくれたマダンを始め他にも多くのスタッフに、慣れないインドでの生活を助けて貰いました。

ブッダガヤは仏教最高の聖地大菩提寺がある場所です。
１０月から３月までの乾季には世界中から様々な国の方が巡礼に訪れます。タイやミャンマー、中国に韓国、もちろん西洋の方々も多く大変活気のある街です。地元のインド人も友好的な方が多く、日本語を話せる人の数も他の地方に比べると非常に多いと耳にしますし、実際よく日本語で話しかけられたりすることが沢山ありました。現地のインド人や、巡礼や観光に訪れている国々の人達との交流は非常に有意義であり、貴重な経験となりました。

菩提樹学園園児と一緒にホーリーの色掛けを祝う

日本寺の中にある菩提樹学園という幼稚園は、現地の方々の為に設立された無料幼児教育施設です。毎年多くの子供たちが入園し、卒園していきます。日本の幼稚園のように運動会や学芸会や遠足も行われ、非常に活気ある幼稚園です。駐在僧も様々な行事に参加させて頂けるので、底抜けに明るいインドの子供たちと一緒に遊ぶことが出来ます。日本寺の外で会うと、園児達は大きな声で「ナマステ先生」と元気よく挨拶してくれるので、こちらも嬉しくなります。子供たちにつられて町の大人たちまで挨拶してくれることもあります。遠い異国の地で子供達と触れ合った体験は一生に残る思い出です。

また、日本寺の駐在僧の仕事として各国の近隣寺院の法要に日本の僧侶の代表として参加する機会があります。

各国僧侶が集う仏教徒結集にて

タイ・ミャンマー・中国・ベトナムなどのお寺があり、それぞれの国の法要形式やお経などを体験することの出来る非常に有意義な時間です。宗教離れが叫ばれている日本の一僧侶として各国の信心深い法要に参加することで、僧侶としてのあるべき姿、使命感や信仰心を改めて強く認識させて頂きました。

日本より遥か離れた異国の地での生活は私にとって、何ひとつ辛くもなく、不安でもなく、大変有意義で楽しく貴重な経験となりました。

人生は一度きりです。私は印度山日本寺を、仏教徒最高の聖地にあり、大変貴重で稀有な経験を積むことのできる唯一無二の場所だと確信しています。

ブッダガヤ郊外

是非とも宗派を問わず数多くの僧侶に、日本に住んでいるだけでは絶対に出来ない経験をしていただいて、これからの仏教界を共に歩ませて頂ければと願っています。

筆者　柳樂一道（27）
島根県浜田市金城町臨済宗妙心寺派是法山隆興寺所属
2013年10月～2014年3月にブッダガヤのインド山日本寺に駐在。




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