2024年9月11日、International Buddhist Confederation(IBC)及び、 Vivekananda International Foundation(VIF) 共催「2nd International Buddhist Media Conclave 2024」がニューデリーで開催され、当協会から逸見世自在師(浄土真宗本願寺派 浄土寺副住職)が出席いたしました。
本会議は世界の仏教系メディアが対話と交流を行うことを中心に組織されたものですが、広くは世界の仏教徒が繋がる会議であり今回は 2018 年 8 月以来の 2 回目の会議となりました。前回は 12 か国から 150 人程の出席者がおり、ダライ・ラマ法王やモディ首相の臨席もあったが、今回は 80 名ほどの出席で若干規模が縮小された様子でした。
開催テーマは「紛争回避と持続可能な発展のための平和的対話」(英語名:Mindful Communication for Conflict Avoidance and Sustainable Development)でした。特に今回の会議ではAI やSNS の発展に伴い仏教系メディアが発信する方途は進化する一方で、世界における仏教徒は他のキリスト教やイスラム教に比較して減少していく目下の情勢を俯瞰してどのように交流と協力ができるのか、といった問題意識でした。以下テーマに沿って議論が交わされました。
セッション1:「21世紀におけるメディアの役割とコミュニケーション」
総じて、世界における宗教間の対立と紛争を助長する要因となり得る事実と異なるニュース「フェイクニュース」の防止や宗教の壁を越えて「マインドフル」に対応・協力していく事の重要性が確認された。
セッション2:「紛争抑止における平和的(マインドフル)対話の実践」
プラスチックによる環境汚染や食糧問題を議論する際の仏教徒としてのマインドフルな対応と紛争解決の方途を模索することを中心に意見が交わされた。
セッション3:「環境問題と持続可能な発展」
前国連開発計画(UNDP)ヘッド(HEAD)からは「資本主義はキリスト教による倫理を背景としており、二元論的思考の限界に直面している。仏教による一元論的思考による経済発展が期待される」といった発言があった。
セッション4:「仏教メディアネットワークとソーシャルネットワークの構築」
AI による多言語翻訳機能による仏教の布教など最新テクノロジーによる技術革新の応用と実践が紹介され議論された。
以上のディスカッションを踏まえ、会議では将来的ビジョンとして仏教系メディアが国を超えて協力し合える組織構築が提案され閉幕しました。
なお、この度の出張でインドとモンゴルとネパールのテレビ局からインタビューを受けました。インタビューでは(公財)国際仏教興隆協会 から派遣された旨と日本寺の活動を紹介し、さらに日本における仏教事情について紹介しました。また昼食時間に VIF事務局長と面会し、日本からの出席者は私が初めてであり、今後も日本からの派遣を強く要望している旨を受けました。
この度の会議では幅広い議題が掲げられたが、参加者に共通する問題意識として、①世界の仏教徒の減少問題、②世界の課題に仏教徒としてどう対応するかといった倫理的課題、③若者層をどう宗教に関心を持ってもらえるか、といった危機意識を感じました。これらの問題は現在の日本にも共通の喫緊の課題であり、今後日本仏教(宗派)や国籍の枠組みを超えて連帯して課題に取り組む必要性を認識しました。特に②の課題に対しては、従来仏教徒は布教活動とそれから派生する過去に重点を置く活動(例えば、仏教研究や遺跡文化財の保存、経典の翻訳)が中心であったが、今後は世界の課題に仏教徒としてどう対応できるのかといった現実的実践課題に対する解決提案型に仏教徒としての責務がシフトしている点が印象的でした。
逸見 世自在