お釈迦様の成道を祝して 成道会開催

【日本寺駐在僧便り】
 去る12月9日月曜日、2024年度の成道会を日本寺本堂に於いて厳修いたしました。本年はブッダガヤの日本仏教寺院、仏心寺清水師(浄土宗)、一心寺片山師(日蓮宗)にご参集頂き、僧侶三人でのお勤めをいたしました。

 次第は印度山日本寺勤行聖典に則り、母校大正大学で修学した表白を追加して読経いたしました。一般参拝者の方は15名ほどがおいでになり、観音経読誦時にはお焼香をしていただきました。

 これまでも日本において様々な形の成道会に参列する機会がありましたが、やはり釈尊成道の地において成道の日をお祝いすることができるのは、仏教徒として大変ありがたいと感じました。またお話しした参列者の方から、上座部仏教では降誕会・成道会・涅槃会の三つを合わせた「Vesak(ウェーサク)/Buddha Jayanti(ブッダジャヤンティ)」というお祭りを5月の満月の日に行う風習がある、とお伺いすることができました。来年の成道会はより準備を重ね臨みたいと思います。合掌

日本寺駐在僧 戸田萌岳

衣をお布施 カティナプジャ

 2024年11月3日、大菩提寺において、カティナプジャが開催されました。主催は大塔管理委員会、今年は委員会所属の比丘Huej師がオーガナイザーを勤めました。(カティナプジャについてはこちら)
当日は天気に恵まれ、清々しい風の吹き抜ける晴天の中、大塔管理委員会(Bodhgaya Temple Management Committee)招待のインド、タイ、カンボジア、バングラデシュ、チベット、日本ほか1000名を超える各国比丘僧侶が参集しました。施主は石油製品の精製・販売、発電、バイオベース製品の生産を行うタイのエネルギー・石油会社「バンチャックコーポレーション」でした。

 今回のカティナプジャは駐在僧として法要に参列する初めての機会でしたが、約20年前に日本寺に駐在されていた番地先生と同席することが叶い、サンガダーナ(施食)やカティナプジャについて様々なお話をお伺いすることができました。法要では上座部仏教の比丘僧侶たちによるパーリ語での誦経に続き、チベット僧の方々の誦経がありました。人生で初めて耳にするチベット語の低くうねるような誦経は、大変感激いたしました。その後、番地先生と拙僧によって般若心経等を奉読いたしました。
大菩提寺での法要が終わると、大塔管理委員会新オフィス・ホールでの施食が行われました。近隣レストラン「フジヤレストラン」によるケータリングのカレーは大変美味かつ豪華で、大変有り難い初めてのサンガダーナとなりました。合掌

駐在僧 戸田萌岳


日本寺本堂で坐禅実習

 2024年10月1日~16日までアメリカ・ミネソタ州カールトン大学主催の「仏教研究海外実習プログラム」に参加の学生約20名が本堂で坐禅実習を行っています。
 3ヶ月間合宿形式でチェンマイ(タイ)とブッダガヤに滞在し、それぞれの指導者のもとで上座仏教と大乗仏教、チベット仏教(密教)の実践と哲学などを学ぶことを目的としたプログラムです。
 40年以上前から実施されており、当協会は当初から大乗仏教を学ぶ坐禅の実習の場として日本寺本堂を提供しています。
 坐禅は曹洞宗の是松慧海師(オーストラリア 直証庵住職)が指導されています。

駐在僧赴任のご挨拶

戸田 萌岳(とだ ほうがく) 真言宗智山派
2024年9月30日着任

この度、印度山日本寺の駐在僧として赴任させて頂く事になりました、真言宗智山派の戸田萌岳と申します。まずは、日本寺派遣に際して、暖かいお力添えを賜りました皆様に篤く御礼申し上げます。
今回の駐在は私にとって初めての渡印となります。しかし、仏教徒として釈尊成道の地に駐在できる事、また御縁のお導きがあったことに深く感謝し、仏教が生まれた土地の空気と文化を全身で受け止めて参ります。
ヒンドゥー教を始めとする、釈尊在世の時代からつづく様々な宗教宗派が現在も息づくインドに於いて、日本の仏教が人々にどのように受容されるのか。世界から釈尊成道の地に修行と安心を求めて訪れる人々にどのように教えをお伝えすることが出来るのか。日本語を母国語として育ち、海外経験の乏しい私が、ヒンドゥー語や英語を始めとする異国語で、人々と仏教を通じた交流が出来ることは、大変貴重な経験だと思います。そしてそれはより深く仏教を学び、また自分の信仰の原点に立ち返ることにもなると考えております。
最後になりますが、駐在僧としての御縁を頂いた皆様方のご期待に沿えるよう、微力ではありますが日本寺の護持興隆に尽力させて頂きたいと思います。
日本寺にご参拝の際はお気軽にお声がけください。 合掌

第2回仏教徒メディア会議 2024

 2024年9月11日、International Buddhist Confederation(IBC)及び、 Vivekananda International Foundation(VIF) 共催「2nd International Buddhist Media Conclave 2024」がニューデリーで開催され、当協会から逸見世自在師(浄土真宗本願寺派 浄土寺副住職)が出席いたしました。

 本会議は世界の仏教系メディアが対話と交流を行うことを中心に組織されたものですが、広くは世界の仏教徒が繋がる会議であり今回は 2018 年 8 月以来の 2 回目の会議となりました。前回は 12 か国から 150 人程の出席者がおり、ダライ・ラマ法王やモディ首相の臨席もあったが、今回は 80 名ほどの出席で若干規模が縮小された様子でした。

 開催テーマは「紛争回避と持続可能な発展のための平和的対話」(英語名:Mindful Communication for Conflict Avoidance and Sustainable Development)でした。特に今回の会議ではAI やSNS の発展に伴い仏教系メディアが発信する方途は進化する一方で、世界における仏教徒は他のキリスト教やイスラム教に比較して減少していく目下の情勢を俯瞰してどのように交流と協力ができるのか、といった問題意識でした。以下テーマに沿って議論が交わされました。

セッション1:「21世紀におけるメディアの役割とコミュニケーション」
総じて、世界における宗教間の対立と紛争を助長する要因となり得る事実と異なるニュース「フェイクニュース」の防止や宗教の壁を越えて「マインドフル」に対応・協力していく事の重要性が確認された。

セッション2:「紛争抑止における平和的(マインドフル)対話の実践」
プラスチックによる環境汚染や食糧問題を議論する際の仏教徒としてのマインドフルな対応と紛争解決の方途を模索することを中心に意見が交わされた。

セッション3:「環境問題と持続可能な発展」
前国連開発計画(UNDP)ヘッド(HEAD)からは「資本主義はキリスト教による倫理を背景としており、二元論的思考の限界に直面している。仏教による一元論的思考による経済発展が期待される」といった発言があった。

セッション4:「仏教メディアネットワークとソーシャルネットワークの構築」
AI による多言語翻訳機能による仏教の布教など最新テクノロジーによる技術革新の応用と実践が紹介され議論された。
 以上のディスカッションを踏まえ、会議では将来的ビジョンとして仏教系メディアが国を超えて協力し合える組織構築が提案され閉幕しました。 

  なお、この度の出張でインドとモンゴルとネパールのテレビ局からインタビューを受けました。インタビューでは(公財)国際仏教興隆協会 から派遣された旨と日本寺の活動を紹介し、さらに日本における仏教事情について紹介しました。また昼食時間に VIF事務局長と面会し、日本からの出席者は私が初めてであり、今後も日本からの派遣を強く要望している旨を受けました。

 この度の会議では幅広い議題が掲げられたが、参加者に共通する問題意識として、①世界の仏教徒の減少問題、②世界の課題に仏教徒としてどう対応するかといった倫理的課題、③若者層をどう宗教に関心を持ってもらえるか、といった危機意識を感じました。これらの問題は現在の日本にも共通の喫緊の課題であり、今後日本仏教(宗派)や国籍の枠組みを超えて連帯して課題に取り組む必要性を認識しました。特に②の課題に対しては、従来仏教徒は布教活動とそれから派生する過去に重点を置く活動(例えば、仏教研究や遺跡文化財の保存、経典の翻訳)が中心であったが、今後は世界の課題に仏教徒としてどう対応できるのかといった現実的実践課題に対する解決提案型に仏教徒としての責務がシフトしている点が印象的でした。

逸見 世自在